高齢化と服薬管理/支援の現場

2.高齢化と服薬管理

高齢者の増加

高齢化が進んでいるのはご存知の通りですが、とくに、ひとり暮らしのお年寄りが増加すると言われています。総務省によれば、令和 22 年(2040 年)には男性 20.8%、女性 24.5%となることが予測されています

高齢者の服薬

高齢者が集まって入居(入院)する住宅、介護、医療施設において、服薬管理について考えてみます

まず、薬を服用する比率を年齢別に、政府の「国民健康、栄養調査」のデータで見てみます

以下で明らかなように、年齢層が上がるにつれて、薬を服用する人の比率が上昇すること、とくに60歳以降で、大幅に上昇していることが分かります

(Source: https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003224185

ここに上げている医薬品は、比較的シビアなものなので、消化剤・整腸剤や抗アレルギー薬、風邪薬、軟膏など日常的な医薬品を含めれば、おそらく60歳以降は大方の人が薬箱に何か保管して服用していると想像できます

通常の住宅街、戸建て住宅地域の高齢化 1

戸建て住宅でも、一時期に大規模開発された住宅街や、若者離れが進み過疎化していく地域では、高齢化の課題が出てきています。ただし、大都市のように、各世帯が自由にかかりつけ医を選んで通院し、処方薬局を選択できる現状では、服薬管理、服薬指導も患者それぞれを担当する医師、看護師、薬剤師(調剤薬局)の仕事となりますので、地域まとめての服薬管理と効率化、というのは現実的ではなさそうです

例えば、田園調布という高級住宅街も高齢化や空き家の増加が報道されますが、居住者は自由に医療機関や処方薬局を選びます

居住者は、飲み忘れが無いか、飲み間違えが無いかを確認して自ら服用しますので、そのような場合の服薬支援のツールとしては、服薬カレンダーや一週間ごとのピルケースなどが便利でしょう

通常の住宅街、戸建て住宅地域の高齢化 2

一方、地方の医療過疎地に対して、厚労省は「へき地医療」対策を講じています

へき地の定義(厚生労働省): へき地とは、「無医地区」、「準無医地区(無医地区に準じる地区)」などのへき地保健医療対策を実施することが必要とされている地域

  • 無医地区とは、医療機関のない地域で、当該地域の中心的な場所を起点として概ね半径4Kmの区域内に人口50人以上が居住している地域であって、かつ、容易に医療機関を利用することができない地区
  • 準無医地区とは、無医地区には該当しないが、無医地区に準じ医療の確保が必要な地区と各都道府県知事が判断し、厚生労働大臣に協議し適当と認めた地区

(Source: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000571686.pdf)

へき地の定義は、高齢者ということではありませんが、現実は、多くのケースで高齢者地域です

「へき地医療拠点病院」が全国に345施設(R4年現在)指定されており、これらと、へき地診療所が連携し、巡回診療、医師派遣、代診医派遣という三つの事業が行われています

巡回診療は、へき地医療拠点病院の医療チームが、対象地域の施設に出向いて診療を行います

へき地医療では、ドクターと薬剤師が、ある程度限られるため、多数の患者が同一の医療チームからの処方オーダーによって処方薬を受け取り、服薬管理を受けるという状況があるでしょう

その後も継続的に同一の医療チームが巡回しますので、服薬についても長期的な経過を観察できます

服薬支援のツールとして、配薬のためのラックやカートのような大掛かりなものは、もともと施設向けであり、適用できないでしょう。それでも、患者が個々に使用できるツールを統一して配布すると、医療チームにとって、効率的に服薬管理ができる可能性があります

通常の住宅街、戸建て住宅地域の高齢化 3

厚生労働省のへき地医療の体系図を、参考として掲示します

(Source: https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001145608.pdf

団地、マンションの高齢化

国交省の「高経年マンションに居住する70 歳以上の世帯主が半数以上に~令和5年度マンション総合調査結果」(5年に一度)によれば、居住者の高齢化が進展し、70 歳以上の割合は25.9%(前回調査より+3.7%)ポイント増加)となっています

また、古いマンションほど、高齢者の割合は高く、昭和59 年(1984 年)以前の古いマンションにおける70 歳以上の割合は55.9%です

(Source: 国交省資料 https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000210.html

高島平団地の人口構成

東京都板橋区の高島平団地をケーススタディとして、団地、マンションの高齢化をみてみます

2025年11/30日現在(12/1日発表)の板橋区の総人口は、583,969人、高島平二丁目、三丁目の人口計は、18,064人、高齢者の構成は以下の通りで、高島平の高齢化が分かります

高島平団地の再生実施計画

高島平は、大きく見ると駅を挟んで東がURの高層賃貸、西が中低層分譲となっており、URと板橋区の協定で再開発計画があります。小学校跡地を種地として駅周辺エリアとともに高層マンションを建設し、順次移転を図る計画とのことです

この計画には反対意見があります。ただ、それはそれとして、次ページ以降で、現状の高齢化に関する街の取り組みをみて、服薬管理という観点で効率化の余地があるか考察します

高島平団地の現在の取り組み

基本として、自治会の活動があります

日常生活の情報共有のほか、防災訓練、団地祭り、新年会、クリスマスイベント、茶話会、音楽サロン、スポーツ大会、市民講座、体操など、活発に活動をされています。認知症の勉強会もあったそうです

 参照: 

 高島平二丁目団地自治会 http://blog.livedoor.jp/takashimadaira2cyome/ 

 高島平三丁目自治会 http://takashimadaira3.org/ 

高齢化に伴う二世帯、三世帯化、また、二世帯には狭い間取りとあれば、子供世帯の巣立ちが避けられなかった事情があるでしょう。こうした事情について、自治会の中でも、真摯に議論がされているようです

それでも、自治体としてここまでコミュニティが深化している例は、なかなかほかに見ません

健康志向で、高齢化が進む中でも助け合う社会が出来ているコミュニティの良い例と見られます

服薬管理の観点で見ると、介護・医療施設のような集団的なシステムは導入できません。各世帯の一人一人、かかりつけ医に通い、重い病気の時はそれぞれの病院に通い、別々の処方薬局を利用するでしょう

通院が困難な場合は、高島平地域でも訪問診療、在宅医療を手掛ける医療機関がありますが、個別の申し込みとなります。このため、服薬管理、服薬支援、見守りという観点では、個別に世帯ごとの医療側と本人の取り組みとなります

大都市の団地、マンションの高齢化と服薬管理

前述のとおり、地方の医療過疎地に対して、国、厚労省は「へき地医療」対策を講じています

その地域に団地などの集合住宅があれば、戸建てと区別なくへき地医療の対象地域となります。これは、医療機関へのアクセスの観点からの政策です

大都市にある団地、マンションでは、住民の医療機関へのアクセスは容易なので、どんなに多くの高齢者が集まって住んでいても、巡回医療を含む、へき地医療の対象ではありません

巡回「健診」については、自治体や健保組合によって、都心でも行われることがあり、例えば前述の高島平では、高島平区民館がその場所に使用されます。巡回健診をする場合は、高島平であれば板橋区役所に事前に計画を届けて受理される必要があります。板橋区自体も巡回健診を行います

健診では、ドクターの診察がありますが、健診で処方オーダーを出すことはなく、薬剤師も介在しません

このため、大都市の団地、マンションの高齢化に際し、医療機関からの地域にわたる集合的な服薬管理は現実的ではありません

もっとも、その地域のドラッグストア・チェーンが、OTC医薬品やサプリのマーケティング活動として、服薬支援ツールを配布するという可能性はありそうです。マーケティング観点の服薬支援については、別紙の「服薬管理支援の試案」をご覧ください

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