貿易決済や貿易金融は、通常は、銀行の外国為替を行う部門や、輸出入商社の領域です
また、製造業も自ら、あるいは商社などを介して財を輸出します
関連する業界として、フォワーダー、海貨業者などが手配をして、船会社や保険会社を利用します
遠い異国の業者との取引に、様々なリスクがありえるので、これまで、銀行の信用や送金ネットワークを利用してきました
ここでは、ブロックチェーンの貿易決済・金融における利用可能性を探ります
Contents(目次)
1.貿易取引と海外送金の原理
2.ブロックチェーンが活用できそうな分野
3.ブロックチェーンによる債務流動化とファイナンス
1.貿易取引と海外送金の原理
貿易取引の担い手
主に輸出の視点で見ると、以下のようなプレヤーがあります

貿易決済と貿易金融
伝統的な貿易決済では、離れた異国の取引先の信用を担保する必要があり、輸入銀行が信用状を送ったり、輸出銀行が船荷の所有権を示す荷為替手形を送り、船会社も加わって、エスクロー的な、Deliver vs. Payment となる決済を実現します
また、サプライヤー、バイヤーそれぞれに、資金繰りの都合があり、取引者の資金繰りを支援するため、銀行が様々な貿易金融のサービスを提供します

そもそも、海外送金する仕組みとは
まず、銀行を利用して海外送金をする原理を、簡単な模式図で説明します
理解のための原理ですので、実際のシステムはもっと複雑で、送金情報の伝達も、日本であれば全銀協のプロトコル、国際間ではSWIFTのメッセージングなどが使用されますが、ここでは、あくまでもその基本的な仕組みを見ておきます(手数料は省略します)
預け金勘定の付け替えで、貸借勘定が移動していくに従い、送金情報も並行して送ります

銀行を経由する貿易決済と信用供与の基本形
遠い異国の会社との取引では、信用調査や銀行による信用供与が必要となるでしょう
輸出側が、代金取立てを意味する「輸出手形」を最初に切ります。手形というと、国内の通常の取引では、買い手が支払いのために手形を切るイメージがありますが、貿易では手形の振出人と流通が逆方向になります。また、船会社が貨物を「船荷証券」という、いわば貨物引換券と言える有価証券を切るのも特徴です。両者とインボイスなどで、「荷為替手形」を構成します

貿易決済における輸出者のニーズ
物の売買では、買い手に資金ニーズがあると思われるでしょう。一方、遠い異国への輸出となると、輸出側の資金ニーズというのもあります

輸出入の支払
伝統的な貿易決済では、銀行の信用を利用して、買い手側の輸入銀行から信用状を開設(発行)してもらい、買い手に資金繰りの問題があると、輸入銀行が実質的には弁済するという仕組みがあります しかし、信用状を使う比率はかなり低下しています。主な支払いを見てみます
- 信用状付荷為替手形決済(L/C 決済。L/Cは信用状、英語で Letter of Credit)
- 輸入側の銀行が実質的に支払いを保証する、その書類として、輸入側が信用状を開設(発行)します
- 輸出側は、輸入側が荷物を引き取れるように、船積書類(船荷証券、インボイスなど。荷物の引き取り券となる)と、輸出手形を併せて、貨物の所有権を示す荷為替手形として、まとめて輸出銀行に渡し、現金化できます(手形貸付のような形)
- 荷為替手形は両銀行を通して輸入側へ渡り、輸入者は輸入銀行に対して支払い、両銀行で最終決済が行われます
- 信用状なし荷為替手形決済
- D/P決済、ないしはD/P手形・・・簡単に言うと、信用状という、輸入側銀行の信用が付かないなかで、輸入者が払ってくれなければ、貨物の引換券である船積書類をあげません、という契約。支払い(payment)無ければ書類(documents)をあげません、ということで、Documents against Payment, D/Pといいます
- D/A決済、ないしはD/A手形・・・輸入者は、すぐに支払わなくても船荷を受け取れます。輸出側から送られた輸出手形、これは輸入者にとっては、代金取立て状のような意味を持ちますが、これを「引き受ける」(Acceptance) ことで近い将来の支払いを約束します。代金の受け取りが延びるという輸出側のリスクはありますが、輸出側が輸入側を支援している時に、輸出側から信用供与をするという働きもあります。シッパーズ・ユーザンスという言葉がありますが、例えば、D/A 120 days after sight という条件ですと、輸出側が4カ月支払猶予を与えることです
- 外国為替送金(主に、電信送金。T/T: Telegraphic Transfer)
- 単純に、直接送金します。貿易相手が良く知ったバイヤーやグループ会社の場合、銀行の信用供与を必要としないでしょう
- この場合の船積書類は、紙の場合は、クーリエなどで直送します。輸出入業、輸送人によるドキュメントのデジタル化が進んでいる場合はそれに従います
- 相互計算(相殺)、決済尻の送金
- 貿易相手間で互いに債権債務がある時に、相殺して、差し引いた決済尻だけを送金します。互いの債権債務のそれぞれを合算して、送金件数を減らすのも広い意味では相殺です(payment netting)