3.高齢者施設と服薬管理
高齢者の入居する住宅、施設 1
厚労省によれば、高齢者向け施設の利用者数は以下の推移となります
(Source: 厚労省・中医協 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001571795.pdf)

高齢者の入居する住宅、施設 2
厚労省や自治体は、高齢化による介護ケアの需要が増大すると予測し、「地域包括ケアシステム」の構築を政策として掲げています
このなかで、施設・居住系サービスのほか、自宅での在宅介護やサービス付き高齢者住宅を含めて計画を立てています
ここでは、服薬管理と服薬支援の観点に絞って、こうした高齢者の居住する住宅、施設をみています
デイサービスセンター、老人短期入所施設(ショートステイ)、老人福祉センター、老人介護支援センターのような施設については、通い、短期、という性格から、とりあえず除きます
(Source: www.mhlw.go.jp/content/12300000/001447747.pdf)

高齢者の入居する住宅、施設 3
サービス付き高齢者向け住宅(高齢者の居住の安定確保に関する法律)
「高齢者向けの賃貸住宅又は老人福祉法第二十九条第一項に規定する有料老人ホーム(以下単に「有料老人ホーム」という。)であって居住の用に供する専用部分を有するものに高齢者(国土交通省令・厚生労働省令で定める年齢その他の要件に該当する者をいう。以下この章において同じ。)を入居させ、状況把握サービス(入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービスをいう。以下同じ。)、生活相談サービス(入居者が日常生活を支障なく営むことができるようにするために入居者からの相談に応じ必要な助言を行うサービスをいう。以下同じ。)その他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供する事業(都道府県などに登録)」とされます。状況により介護保険サービスの利用も可能です
- 状況把握サービス(安否確認と一時的な対応など)
- 生活相談サービス
- その他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービス
- 住宅の構造としても、法により、加齢対応構造等(バリアフリー構造)をとる
実際には、住居は通常の賃貸マンションのような、各戸にキッチンや浴室を持つような設計ですが、
- 施設の厨房が食事を提供するところもあり、一般型でも状況に応じ訪問介護は可能
- 常駐スタッフから介護サービスを受けられるような「介護型」、後述の有料老人ホームと同等の機能を有するものもあります

高齢者の入居する住宅、施設 4
有料老人ホーム、老人福祉施設(老人福祉法に基づく施設)
有料老人ホーム、老人福祉法により規定され、「老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であって厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)」とされています
- 健康型、住宅型、介護付きの三つがあり、介護型では介護又は看護師の配置が要介護者3人につき一人とされます
- いずれも基本となるサービスとして、食事や入浴設備、健康管理などがあり、健康型、住宅型であっても、クリニックを招致して併設し、入居者を広くケアする施設もあります
軽費老人ホーム(老人福祉法、社会福祉法、軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準)、無料又は低額な料金で、食事の提供、入浴等の準備、相談及び援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上必要な便宜を提供するとされています。いくつかのタイプがあり、食事提供の無い、自炊のホームもあります
- 生活相談員、介護職員、栄養士又は管理栄養士、介護職員は30人に一人との基準があります
養護老人ホーム(老人福祉法第20条の4)
- こちらもスタッフは基本、生活相談員と介護スタッフで、看護職員は入居者100人に対し一人以上、介護スタッフは15人に一人とされます。経済的、環境的に在宅困難な自立した高齢者向けとされます
特別養護老人ホーム(特養)(老人福祉法第20条の5、介護保険法第8条第27項に定める「介護老人福祉施設」、厚労省通達・特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準)
- 常に介護が必要な要介護高齢者が、入浴・食事・排泄などの日常生活支援や機能訓練、健康管理を受けながら安心して暮らせる公的な生活施設で、社会福祉法人などが運営し、費用が比較的安く、終身利用も可能(在宅復帰を前提)な点が特徴です
- 入居条件は、65歳以上の要介護3以上、寝たきり、認知症、精神・知的障害などで常時介護が必要な方とされ、40-64歳でも重い疾病の方(特定疾病)かつ要介護3以上は認められます
- 医療法で定められる施設ではありませんが、施設内での医療提供に関連しては、医療法の一部規定や関連規制が関わります
- 配置基準を見ると、医師は必要な数、看護・介護職員は3対1以上、生活相談員100対1、ほか機能訓練指導員、介護支援専門員、栄養士です
- これとは別に、看護職員は常勤換算で、入居者30人以下で1名、50人増えるごとに1名追加が必要
(Source: 公益社団法人全国有料老人ホーム協会、公益社団法人全国老人福祉施設協議会など)
高齢者の入居する住宅、施設 5
介護老人保健施設(老健、介護保険法第8条第28項)
要介護高齢者(要介護1以上)であって、「主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者」に対し、自立支援と在宅復帰を目指し、医師の管理下で看護・介護、リハビリ(理学療法士・作業療法士等)、栄養管理などを提供する施設です
病院退院後、自宅に戻るまでの橋渡し役で、原則3~6ヶ月程度の短期間利用が基本。在宅復帰が目的で、特養(居住目的)とは異なります。もっとも、老健で看取り対応を行うケースも生じます
医師・看護師が常駐し、理学療法士・作業療法士などが在籍しますが、一時的な利用(原則3~6ヶ月程度)で、自立した生活を取り戻すことを目的とし、費用は介護保険適用で比較的安価にしており、入所、通所、訪問の三つの利用形態で多職種が連携してケアを行います
配置基準は、医師常勤1以上、100対1以上、薬剤師は実情に応じ、常勤換算で300対1を基準、看護・介護職員は3対1以上、うち看護は2/7程度、ほか理学療法士や栄養士などが配置されます
老健は、医療機関に近い存在です。「医療法」に、「医療提供施設」として定義されています。下図は、「老人保健施設協会」の説明を単純化してみましたが、入院生活から自宅への橋渡しとなり、病棟での服薬を引き継ぐ必要も多々あります

高齢者の入居する住宅、施設 6
介護医療院(介護保険法第8条第29項)
長期療養が必要な要介護高齢者向けに、医療と介護を一体的に提供する介護保険施設で、従来の「介護療養型医療施設」( 2024年3月末で廃止)に代わり2018年に創設されました。医療法上の位置づけとしても、「医療提供施設」とされます
- 医療が必要な要介護高齢者の長期療養、生活施設
- 「住まい」と「医療」を両立させ、医師、看護師、リハビリ職などが常駐し、喀痰吸引や経管栄養などの医療ケア、看取りケアも受けられ、生活の場と医療の質の高いケアを両立させ、地域に開かれた施設を目指しています
- より重篤な高齢者を対象とする、Ⅰ型、容体が安定した対象者向けのⅡ型、それぞれ施設基準(スタッフの配置基準)は以下の通り、Ⅰ型では看護、介護別々に6対1と決められています。Ⅱ型は老健程度です

高齢者支援と服薬介助
高齢者介護に関して、厚労省も継続的な服薬指導の施策を挙げており、薬剤師、調剤薬局に対して、認知機能障害や、独居(相談相手がいない)、老々介護などについて、内服回数の減少、一包化、合剤化、個人に合った剤形の選択などを検討するよう指摘しています
また、医療の免許を有しない介護スタッフが、要介護者に対して行う服薬介助は、以下のような範囲で認められています
(Source: 厚生労働省 「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長「調剤業務のり方について」)
- 皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付
- 点眼薬の点眼
- 一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)
- 肛門からの坐薬挿入
- 又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること
- 医薬品(PTPシート又はこれに準ずるものにより包装されたままの医薬品)の必要量を取り揃える行為
このため、一包化「されていない」内服薬について要介護者の内服を手伝うことに制約があり、また、PTPシートから錠剤/カプセルを取り出す行為にも制約があるとみられます
PTPからまとめて錠剤を取り出す器具、錠剤取り出し器(らく錠くんなど)は、薬剤師が使う器具です。介護施設でも専門家がいれば、使用されるようです

高齢者への服薬介助のリスク
高齢者介護施設における事故報告には、いくつかの異なる調査方法があり、自治体ごと、行政ごとに異なる分類で取りまとめられています。シリアスな事故、事故後に入院するケースなどに焦点を当てた調査では、転倒の比率が圧倒的に多くなります
一方、業務ミス程度のものを含んだ事故調査では、「誤薬」の頻度が結構あります。この誤薬には、薬の服用時点を間違える、うっかり薬の時間を過ぎてしまう「飲ませ忘れ」、他の入居者のものを誤って与えてしまう誤与薬が含まれます(下記の栃木県の調査による)
(「与薬」は、病棟などで看護士が正確に行う必要のある行為とされますが、介護における与薬は、通常、服薬介助をさします)

配薬準備: まず調剤、配達
医療スタッフや介護スタッフが配置されている施設であっても、調剤薬局の役割は大きいでしょう
調剤薬局は、処方オーダー、処方箋に基づいた薬を「調剤」します
調剤とは、薬剤師が薬局の在庫から正確に薬を選び、必要があれば計量して分包、あるいは、薬の混合、毎回の服用分をそれぞれ一包化するなどの作業を行います
その後、施設を訪問し、医薬品を配達、ほかにも、ドクターとのコミュニケーション(処方医への疑義照会)、介護スタッフとのコミュニケーション、必要に応じて、患者それぞれに対する服薬指導も行います
ちなみに、医療機関の入院病棟では、医師の処方オーダーに基づく医薬品の配薬準備として、薬剤師と看護師の連携で、必要があれば一包化され、その後、大きなピルケースである「配薬カート」に患者ごと、服薬日時ごとに区分整理します。介護施設に対しても、調剤薬局によって異なりますが、病棟と同じような対応ができるところがあるようです

配薬準備: 服薬介助
服用時点は、食事のタイミングに紐づけられていることが多いですが、施設で入所者が一斉に食事をとる場合、服薬も大忙しとなります
- 服用のための水の確認、入所者への声掛け
- 薬の配布、必要に応じ、一人一人の服用の介助、見守り
介護サービスで賄う場合は、介護スタッフが投薬するのは、一包化された内用薬の内服とされており、PTPで包装された薬は、そのPTPを入所者の前に用意するまで、あとは本人が服用するとの解釈となっています
看護師が常駐する施設であれば、一包化しなくとも内服を手伝うことはできます。特養、老健、介護医療院では、看護職員の配置比率が高いので、施設や入居者それぞれの事情によっては、病棟と同様の与薬が可能です
要介護認定のレベルの高い入所者が多い介護施設では、看護スタッフが全員の内服を個別に薬袋レベルで支援することは難しいでしょう。そこで一包化と、配薬カートを利用することが多いようです
病棟で、大きなピルケースである「配薬カート」に患者ごと、服薬日時ごとに区分整理されるように、介護施設でも、配薬カートや、ポケット付きの服薬カレンダーを使用することが多いようです。入居者が勝手に触って間違えないように介護スタッフ側で管理したり、鍵をかける例もあるとのことです
- 服用後の確認、飲み残しがないか
- 記録、必要に応じて薬剤師へのフィードバック

配置基準、居住形態、服薬介助ツール
看護、介護のスタッフが厚くなるのは、要介護高齢者が多い、また要介護定レベルが上がる施設です
それぞれ服薬介助の支援ツールが利用されており、また、さらに利用促進、機能向上が望まれるでしょう
